災害時に犬と避難するための準備は、フードを備蓄するだけではありません。同行避難の意味を知り、地域の受入条件を調べ、犬を安全に運べるようにしておくことも大切です。
すべてを一度に完璧にそろえる必要はありません。この記事では、避難先、持出し品、日頃の練習、自治体情報を、今日から一つずつ確認できる順番で整理します。
この記事で分かること
- 同行避難と避難所での同室飼育の違い
- 犬用の持出し品と備蓄の目安
- 災害時の移動や待機に備えて日頃から練習したいこと
- 避難先と自治体情報の確認方法
犬の防災で、まず確認したい5つの準備
- 自宅周辺の災害リスクと避難先
- 自治体のペット受入条件
- フード・水・薬などの備蓄
- キャリーやリードを使った避難練習
- 迷子対策と健康情報の記録
同行避難は、避難所で犬と同じ部屋に入れることを意味しません。避難後の飼養場所は自治体や施設によって異なるため、平常時の確認が必要です。
同行避難は「犬と安全な場所まで避難すること」
環境省の「ペットの災害対策」では、災害時はまず飼い主自身や家族の安全を確保し、ペットと一緒に安全な場所へ避難する「同行避難」に備えるよう案内しています。
ただし、同行避難は、避難所で犬と同じ部屋にいられるという意味ではありません。
避難所に到着した後の飼養場所は、人の居住場所と分かれる場合があります。
受入方法は自治体、施設、災害の状況によって異なります。
「犬を受け入れる避難所か」「犬はどこで過ごす想定か」を、平常時に確認しておくことが出発点です。
発災時は状況が変わる可能性があるため、自治体が出す最新情報にも従いましょう。
犬との避難先は一つに決めず、複数の選択肢を考える
必ず指定避難所へ行くことだけが避難とは限りません。
自宅が安全なら在宅避難、危険なら避難所、親戚・知人宅、一時預け先など、犬と過ごせる候補を複数考えましょう。
「指定緊急避難場所」は津波や洪水などの危険から緊急に逃れる場所、「指定避難所」は自宅へ戻れない人が一定期間過ごす施設です。
同じ施設が指定緊急避難場所と指定避難所の両方に指定される場合もありますが、それぞれの目的や、対応する災害の種類は異なります。
最新の指定状況は自治体の案内で確認してください。
国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」では、洪水、土砂災害、高潮、津波などのリスクと、各自治体のハザードマップを確認できます。
避難先までの経路は一つに絞らず、浸水や通行止めも考えて複数用意しましょう。
可能なら、犬と必要最低限の荷物を持って実際に歩いてみましょう。
夜間、雨天、停電時には同じように動けない可能性も考えましょう。
車中避難を考える家庭もありますが、車内で長時間同じ姿勢を続けることによる健康リスクや、排気ガス、一酸化炭素中毒、暑さ・寒さにも注意が必要です。
車中避難を選ぶ場合も、自治体への所在連絡や支援情報の確認を行い、人と犬の体調を継続して確認しましょう。
安易に第一候補とせず、内閣府や自治体の案内を確認して別の選択肢も用意しましょう。
犬の同行避難について自治体に確認したいこと
自治体の公式サイトで「ペット 同行避難」「ペット 防災」「避難所 ペット」などと検索し、地域防災計画、避難所一覧、ペット同行避難ガイドを探しましょう。
情報が見つからなければ、防災担当や動物愛護担当へ確認しましょう。
事前に聞いておきたいのは、次のような点です。
- どの避難所で犬を受け入れる想定か
- 飼養場所は屋内か屋外か、人の居住場所とは別か
- ケージやキャリーを飼い主が持参する必要があるか
- 大型犬、多頭飼育、持病のある犬に個別の条件があるか
- 受付時に提示する情報や証明書はあるか
- 排泄物、ごみ、鳴き声などに関するルールはあるか
- 避難所の開設状況や変更をどこで確認できるか
一度確認して終わりではなく、防災訓練の時期や転居時などに見直しましょう。
家族が別々の場所にいる時間も考え、誰が犬を連れ出すか、連絡が取れないときはどうするかも決めておきましょう。
一人暮らしや高齢者だけの世帯では、近隣、親族、知人に支援を頼めるか平常時に相談しておくと選択肢が増えます。
犬の防災グッズは持出し品と在宅備蓄に分ける
環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」では、水やフードは少なくとも5日分、できれば7日分以上が目安とされています。
救援物資では、療法食や薬など個別性の高い物がすぐに手に入らない可能性があります。
ただし、すべてを一袋へ詰めて運べなくなっては避難が難しくなります。
「すぐ持ち出す物」と「自宅や車などへ分散して保管する物」に分けましょう。
優先度が高い物は次のとおりです。
| 優先度 | 主な物 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 最優先 | 常用薬・療法食 | 入手できない場合に備え、 動物病院と相談する |
| 高い | フード・水 | 少なくとも5日分、できれば7日分以上を目安に準備する |
| 高い | キャリー・リード | 破損や外れがないか確認する |
| 高い | 写真・連絡先 ・健康情報 |
紙とスマートフォンの両方に残す |
| 状況別 | 保温・冷却用品、 靴、移動補助具 |
季節、体格、年齢、健康状態に合わせる |
必要量は犬の体格、頭数、健康状態、季節、地域で変わります。
薬や療法食の備蓄方法と量は、かかりつけの動物病院へ相談してください。
フードと水は普段使いながら補充し、月に一度など時期を決めて期限と持出し袋の重さを確認しましょう。
犬との避難に備えて日頃から練習したいこと
環境省の一般飼い主向けガイドラインでは、ケージやキャリーバッグに入ること、決められた場所で排泄すること、人やほかの動物を怖がったり攻撃的になったりしないことなどが、平常時の対策として挙げられています。
まず、キャリーを災害時だけに出す物にせず、扉を開けた状態で生活空間に置いてみましょう。
中でおやつを食べる、短時間休むなど、犬が落ち着ける経験を少しずつ重ねましょう。
次のような練習も、移動や待機の助けになる可能性があります。
- 首輪やハーネスを落ち着いて装着する
- リードを付け、飼い主の近くで待つ
- 「おいで」「待って」など普段使う合図を練習する
- 体や足先に無理なく触れられることに慣らす
- ペットシーツなど決めた場所でも排泄できるよう試す
災害時は犬も驚き、普段と違う行動をする可能性があります。
平常時のしつけができていれば安全が保証されるわけではないため、リード、キャリー、扉の管理など物理的な対策も重ねましょう。
また、強い音や人混みに無理やりさらす必要はありません。
犬の怖がり方や体調には個体差があります。
強い恐怖、攻撃行動、持病がある場合は、獣医師や行動に詳しい専門家へ相談してください。
迷子対策と健康情報は紙とスマートフォンに残す
災害時は扉や窓の破損、移動中の道具の外れなどで、犬が迷子になる可能性があります。
迷子札、鑑札、狂犬病予防注射済票を確認し、マイクロチップを装着している犬は登録情報が現在の住所と連絡先になっているか見直しましょう。
マイクロチップはGPSのように居場所を追跡する機器ではありません。
読み取った番号と登録情報を照合して身元確認に役立てるものなので、首輪等の目で見える表示も組み合わせましょう。
次の情報は、通信や充電が途切れても確認できるよう、スマートフォンと紙の両方に残しましょう。
- 最近の犬だけの写真と、飼い主と犬が一緒に写った写真
- 名前、性別、年齢、毛色、特徴、マイクロチップ番号
- 持病、薬、アレルギー、食事、ワクチン等の健康情報
- かかりつけの動物病院と緊急連絡先
- 家族以外の一時預け先と連絡先
防災の知識は、日頃の学びや体験にもつながる
犬の防災は、災害が起きてから初めて考えるものではありません。
愛玩動物飼養管理士の学習では、適正飼養や所有者明示、災害への備えなど、日頃の暮らしにもつながる知識を学ぶ機会があります。
私は学習をきっかけに、備蓄だけでなく、同行避難や避難先、日頃の練習まで確認するようになりました。
また、犬とのキャンプや外出も、防災準備の一部を確認する機会になります。
限られた荷物で過ごす、犬の水や食事を用意する、慣れない場所で休む、リードやクレートを使うといった経験は、「実際に犬と移動できるか」を考えるきっかけになります。
ただし、キャンプと災害時の避難は同じではありません。
あくまで、防災用品や移動方法を平常時に試す一つの機会として考えるのがよいでしょう。
今日から始める5項目
- 自宅周辺の災害リスクを一つ確認する
- 自治体サイトで「ペット 同行避難」を検索する
- キャリーの扉を開けたまま生活空間に置く
- フード、水、薬の残量と期限を確認する
- 犬の写真と連絡先を紙にも残す
できれば、持出し袋と犬を連れて玄関から外へ出るところまで試してください。
重すぎる、リードを持ちながら袋を運べない、キャリーが玄関を通りにくいといった問題は、実際に試してみると問題を見つけやすくなります。
まとめ
同行避難は、犬と一緒に安全な場所へ逃げる行動です。
避難所で人と犬が同じ部屋に入れることを保証する言葉ではありません。
災害前にしておきたい準備は、次の5つです。
- 地域の災害リスクと避難ルートを確認する
- 犬の受入条件を自治体へ確認する
- 持出し品と在宅備蓄を分けて用意する
- キャリーや装着、待機などを日常の中で練習する
- 迷子対策と健康情報を紙とスマートフォンに残す
全部を一度に終わらせなくても構いません。
まずは自治体サイトを開く、キャリーを部屋に置くなど、小さな一項目から始めてみましょう。
末尾に記事の内容を確認できるミニクイズを用意しました。
挑戦してみてください。
参考情報
- 環境省「ペットの災害対策」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/1_law/disaster.html - 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン<一般飼い主編>」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/2_data/pamph/h3009a.html - 国土地理院「ハザードマップポータルサイト」
https://disaportal.gsi.go.jp/ - 内閣府「避難所の生活環境対策」
https://www.bousai.go.jp/taisaku/hinanjo/index.html - e-Gov法令検索「災害対策基本法」
https://laws.e-gov.go.jp/law/336AC0000000223 - 環境省「犬と猫のマイクロチップ情報登録について」
https://www.env.go.jp/nature/dobutsu/aigo/pickup/chip.html
確認日:2026年8月7日
注意書き
本記事は、犬との災害避難に関する一般的な学習情報です。
避難所の開設状況やペットの受入条件は、地域、施設、災害の状況で変わります。
最新の自治体情報を確認し、薬、療法食、健康状態、強い恐怖や行動上の心配は、かかりつけの獣医師等へ相談してください。
災害時は飼い主と家族の安全確保を優先し、行政機関の避難情報に従ってください。
ミニクイズ
問題1
「同行避難」の説明として最も適切なものはどれでしょうか。
- A. すべての避難所で犬と同じ部屋に宿泊すること
- B. 飼い主が犬と一緒に安全な場所まで避難すること
- C. 犬だけを先に避難所へ預けること
- D. 自宅が危険でも犬と在宅避難を続けること
正解:B
解説:同行避難は犬と一緒に安全な場所へ避難する行動です。避難所での同室飼育を意味せず、受入方法は自治体等で異なります。
問題2
環境省の一般飼い主向けガイドラインに沿った犬用の水・フードの備蓄目安はどれでしょうか。
- A. 1食分だけ
- B. 1日分だけ
- C. 少なくとも5日分、できれば7日分以上
- D. 救援物資が届くため備蓄は不要
正解:C
解説:特に療法食や薬など個別性の高い物は入手に時間がかかる可能性があります。実際の必要量や保管方法は犬の状態に合わせて考えます。
問題3
平常時の準備として適切なものはどれでしょうか。
- A. キャリーは災害当日に初めて使う
- B. 最寄りの避難所なら犬も必ず同室に入れると考える
- C. 強い音へ無理にさらして一度で慣らす
- D. 自治体の受入条件を確認し、キャリー等に少しずつ慣らす
正解:D
解説:避難所の条件は地域等で異なります。日頃から無理のない範囲でキャリーや装着、待機を練習し、物理的な逃走防止も組み合わせます。




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