2026年6月8日、環境省は「人とペットの災害対策ガイドライン」の改訂案を公表し、パブリックコメントの募集を始めました。
意見募集の対象は、添付資料2の「人とペットの災害対策ガイドライン」改訂案です。募集期間は2026年6月8日から6月26日までとされています。(環境省)
このガイドラインは、主に地方公共団体がペットの災害対策を検討する際の指針として作られたものです。環境省によると、2018年に策定されたガイドラインについて、令和6年能登半島地震での対応状況や防災基本計画の修正などを踏まえ、改訂に向けた検討が進められてきました。(環境省)
行政向けの資料と聞くと、少し難しく感じるかもしれません。
しかし内容を見ていくと、犬や猫と暮らす飼い主にとっても、とても関係の深いテーマが含まれています。
特に私が注目したのは、しつけや社会化、クレートに慣れることなど、日頃の暮らしの積み重ねが災害時の備えにもなるという点です。
この記事では、環境省のガイドライン改訂案をきっかけに、飼い主として今できることを考えてみます。
この記事でわかること
この記事では、次の内容を整理します。
- 「人とペットの災害対策ガイドライン」とは何か
- 今回の改訂案がなぜ出されたのか
- 飼い主に関係が深いポイント
- しつけやクレートトレーニングが防災につながる理由
- パブリックコメントをどう考えればよいか
なお、この記事は改訂案のすべてを詳しく解説するものではありません。
資料全体は長いため、ここでは飼い主目線で特に考えたい部分に絞って整理します。
改訂案の全体像、2018年版との違い、パブリックコメントの見方を知りたい方は、先にこちらの記事を読むと流れがつかみやすいです。
人とペットの災害対策ガイドラインとは
「人とペットの災害対策ガイドライン」は、環境省が2018年に策定した資料です。
環境省は、このガイドラインについて、地方公共団体が地域の状況に応じたペットの災害対策を検討する際の指針となるものと説明しています。(環境省)
つまり、主な対象は自治体です。
ただし、内容は自治体だけに関係するものではありません。
災害時にペットと避難するには、自治体の受け入れ体制だけでなく、飼い主自身の備えも欠かせません。
たとえば、
- ペットを連れて避難できるか
- 避難所でどのように過ごすか
- クレートやケージに入れるか
- フードや水を備蓄しているか
- 他の避難者や動物とトラブルにならないか
といったことは、すべて飼い主の日頃の準備と関係しています。
その意味で、このガイドラインは行政向けでありながら、ペットと暮らす人にとっても大切な資料だと感じます。
今回の改訂案で気になったポイント
今回の改訂案は、令和6年能登半島地震での対応状況の検証や、防災基本計画の修正などを踏まえて検討されてきたものです。(環境省)
私が飼い主目線で気になったポイントは、大きく分けると次の3つです。
同行避難だけでなく、避難後の生活も大切になる
ペット防災では、「同行避難」という言葉がよく使われます。
同行避難とは、災害時にペットを置き去りにせず、飼い主がペットと一緒に安全な場所へ避難することです。
ただし、実際の災害では、避難所に到着すれば終わりではありません。
避難した後には、
- ペットをどこで過ごさせるのか
- 鳴き声やにおいにどう配慮するのか
- アレルギーがある人とどう共存するのか
- 排泄や散歩をどうするのか
- 長期避難になった場合にどう対応するのか
といった課題があります。
つまり、これからのペット防災では、「一緒に逃げる」だけでなく、「避難先でどう暮らすか」まで考える必要があります。
平時の備えがより重要になる
災害が起きてから、急にペットをクレートに入れようとしても難しい場合があります。
普段からクレートに入る習慣がなければ、ペットにとっても大きなストレスになります。
また、避難所や一時預かり先では、普段と違う人、音、におい、他の動物がいます。
そのような環境で少しでも落ち着いて過ごすためには、日頃からの備えが大切です。
具体的には、
- クレートやケージに慣らしておく
- 基本的なしつけをしておく
- フードや水を備蓄しておく
- ワクチンやノミ・ダニ対策など健康管理をしておく
- 迷子札やマイクロチップなどの身元表示を確認しておく
といった準備です。
どれも特別なことではありません。
しかし、災害時にはこうした日常の積み重ねが大きな差になると感じます。
自治体や支援団体との連携も重要になる
ペットの災害対策は、飼い主だけで完結するものではありません。
自治体、防災担当部局、動物愛護担当部局、獣医師会、動物愛護団体、ボランティアなど、さまざまな関係者の連携が必要になります。
ただし、行政や支援団体がすべてを担えるわけではありません。
だからこそ、飼い主自身も「自分とペットの命を守るために何ができるか」を考えておく必要があります。
災害時に支援を受けやすくするためにも、普段からのしつけ、健康管理、備蓄、身元表示は大切です。
私が特に注目したのは「しつけ」の意味
今回のガイドライン改訂案をきっかけに、私が特に考えたいと思ったのは、犬のしつけの意味です。
しつけというと、
- 他人に迷惑をかけないため
- マナーを守るため
- 飼いやすくするため
というイメージを持つ人も多いと思います。
もちろん、それも大切です。
しかし災害時という視点で考えると、しつけは単なるマナーではありません。
愛犬の命を守り、避難先で一緒に過ごすための備えにもなります。
たとえば、
- 「ハウス」ができると、クレートやケージで過ごしやすくなる
- 「マテ」ができると、混乱した場面で事故を防ぎやすくなる
- 「オイデ」ができると、逸走時の危険を減らせる可能性がある
- 人や他の犬に慣れていると、避難先でのストレスやトラブルを減らしやすい
こうした基本的なしつけは、特別な芸ではありません。
日常生活を安全に過ごすための土台であり、災害時にも役立つ大切な備えです。
クレートトレーニングは防災対策でもある
災害時には、ペットがクレートやケージで過ごす場面が出てくる可能性があります。
避難所、一時預かり、車中泊、親族宅、ペットホテルなど、普段と違う場所で過ごすことも考えられます。
そのとき、クレートに入ること自体が大きなストレスになってしまうと、犬にとっても飼い主にとってもつらい状況になります。
だからこそ、普段からクレートを「閉じ込められる場所」ではなく、安心して休める場所として慣らしておくことが大切です。
最初から長時間入れる必要はありません。
おやつを使ったり、短い時間から始めたりしながら、少しずつ慣れていくことが大切です。
完璧にできる必要はありません。
まずは、愛犬が少しでも安心できる場所を増やしておくこと。
それが、防災にもつながると感じます。
社会化も災害時の助けになる
犬の社会化というと、子犬の時期だけの話と思われることがあります。
しかし、成犬になってからも、無理のない範囲でさまざまな環境に慣れていくことは大切です。
災害時には、普段とは違う環境に置かれる可能性があります。
- 知らない人が近くにいる
- 他の犬や猫がいる
- 大きな音がする
- 車や避難所で過ごす
- 生活リズムが変わる
こうした変化にまったく慣れていないと、ペットの不安は大きくなります。
もちろん、怖がりな犬に無理をさせる必要はありません。
ただ、日頃から少しずつ外の環境に触れたり、人や音に慣れる経験を重ねたりすることは、災害時のストレスを減らす助けになると考えられます。
キャンプ経験が防災につながると感じる理由
私は、愛犬とのキャンプ経験も防災に役立つ部分があると感じています。
災害時には、指定避難所だけでなく、在宅避難、車中での一時的な避難、親族宅への避難、一時預かりなど、状況に応じて複数の選択肢を考える必要があります。
この視点で見ると、犬連れキャンプには防災と重なる部分があります。
分散避難という考え方と、犬連れキャンプの経験
今回の改訂案で、私がもう一つ大きな変化だと感じたのが、「分散避難」という考え方です。
災害時の避難というと、どうしても「指定避難所へ行くこと」をイメージしがちです。
しかし実際には、ペットと暮らしている場合、避難所だけが選択肢になるとは限りません。
状況によっては、
- 自宅が安全であれば在宅避難をする
- 車中で一時的に過ごす
- 親族や知人の家に避難する
- ペットを受け入れられる施設や一時預かり先を検討する
- 避難所以外の安全な場所で過ごす
といった選択肢も考える必要があります。
もちろん、危険な場所にとどまることをすすめるものではありません。
命を守るためには、自治体の避難情報や災害の状況を確認し、安全な場所へ避難することが最優先です。
そのうえで、ペットと暮らす家庭では、避難先を一つに決め打ちせず、複数の選択肢を考えておくことが大切だと感じます。
ここで、犬連れキャンプの経験が役立つ場面があります。
キャンプでは、
- 車で移動する
- 限られた荷物で過ごす
- 外の環境で休む
- クレートやベッドを使う
- フード・水・トイレ用品を持参する
- 周囲の人や犬に配慮する
といった経験をします。
これらは、災害時の分散避難と重なる部分があります。
犬連れキャンプは、もちろん防災そのものではありません。
キャンプをしているからといって、災害時の備えが万全になるわけでもありません。
しかし、愛犬が普段と違う場所で過ごす経験をしていること、飼い主が必要な荷物や移動時の注意点を把握していることは、いざという時の助けになります。
その意味で、犬連れキャンプは単なるレジャーではなく、分散避難を考えるヒントになるという面もあるのではないかと思います。
パブリックコメントは専門家だけのものではない
今回の改訂案では、パブリックコメントも募集されています。
パブリックコメントの対象や、改訂案のどこを読めばよいかは、以下の記事で詳しく整理しました。
この記事では、そこから一歩進んで、飼い主として今日からできる備えに絞って考えます。
ガイドラインを「行動のきっかけ」にしたい
今回のガイドライン改訂案を見て、私は「これをきっかけに、しつけや避難行動を考える人が増えてほしい」と感じました。
防災というと、どうしても非常用バッグや備蓄品に目が向きがちです。
もちろん、それも大切です。
しかしペット防災では、物をそろえるだけでは足りません。
- クレートに入れるか
- 人や他の動物に慣れているか
- 飼い主の指示を聞けるか
- 避難先で落ち着く練習をしているか
- どこへ避難するか家族で話し合っているか
こうした行動の準備も必要です。
しつけは、犬を人間の都合に合わせるだけのものでもありません。
愛犬が人間社会の中で安全に暮らし、災害時にもできるだけ安心して過ごすための支えです。
完璧な飼い主を目指す必要もありません。
でも、今日からできる小さな備えはあります。
家族で決めておきたい犬の防災役割分担
犬の防災対策は、家族の誰か一人だけが背負うものではありません。
フードや水の備蓄を確認する人、迷子札やマイクロチップ情報を確認する人、避難先を調べる人など、できる範囲で役割を分けておくと安心です。
子どもがいる家庭では、「子どもが手伝えること」と「大人が責任を持つこと」を分けて考えると、無理なく続けやすくなります。
まとめ:愛犬と避難するために、今日から少しずつ備える
環境省の「人とペットの災害対策ガイドライン」改訂案は、一見すると行政向けの難しい資料に見えるかもしれません。
しかし内容を見ていくと、ペットと暮らす飼い主にとっても大切なテーマが多く含まれています。
特に私が感じたのは、しつけや社会化、クレートトレーニングといった日頃の積み重ねが、災害時にも役立つということです。
同行避難は、ペットを連れて逃げることだけではありません。
避難した先で、ペットと人ができるだけ安全に、安心して過ごすことまで考える必要があります。
そのためにできることは、特別なことばかりではありません。
まずは、
- クレートに少しずつ慣らす
- フードや水を備蓄する
- 迷子札やマイクロチップ情報を確認する
- 基本的なしつけを見直す
- 家族で避難先を話し合う
といった小さなことから始めてみる。
また、今回の改訂案では、避難所だけに頼らない「分散避難」の考え方も重要な視点だと感じました。だからこそ、普段から愛犬と車移動や屋外環境に慣れておくこと、複数の避難先を考えておくことが大切だと思います。
今回のガイドライン改訂案が、ペット防災を考えるきっかけになればよいと思います。
そして、パブリックコメントに関心がある方は、資料のすべてを完璧に読むことを目指さなくても大丈夫です。
まずは自分に関係する部分に目を通し、飼い主として感じたことを整理してみる。
それも、ペットと人が共に暮らせる社会を考える一歩になるのではないでしょうか。
参考資料・出典
- 環境省「『人とペットの災害対策ガイドライン』の改訂案に係る意見の募集(パブリック・コメント)について」
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」改訂案
- 環境省「人とペットの災害対策ガイドライン」平成30年3月発行
ミニクイズ
この記事で紹介した内容を復習できるクイズです。
Q1:愛犬との避難に備えて、平時からクレートやキャリーに慣れておく理由として、最も適切なものはどれでしょう?
A. 災害時に必ずクレートだけで生活するため
B. 避難所や一時預かり、車中避難などで落ち着いて過ごしやすくするため
C. 犬を長時間閉じ込めるため
D. 散歩に行かなくてもよくするため
正解:B
解説:
クレートやキャリーは、避難所・一時預かり・車中避難・親族宅など、普段と違う場所で過ごすときに役立つことがあります。無理に閉じ込めるのではなく、安心して休める場所として少しずつ慣らすことが大切です。
Q2:災害時に備えた「所有者明示」として、適切なものはどれでしょう?
A. 首輪の色を覚えておく
B. 愛犬の写真をSNSに投稿しておく
C. 迷子札、マイクロチップ、鑑札、狂犬病予防注射済票などで飼い主がわかるようにする
D. 名前を呼べば戻ってくるので、特に準備しなくてよい
正解:C
解説:
災害時は、驚いたペットが逃げてしまう可能性があります。迷子札やマイクロチップなど、複数の方法で飼い主がわかるようにしておくことが大切です。
Q3:犬連れキャンプの経験とペット防災の関係について、記事の考え方に近いものはどれでしょう?
A. キャンプをしていれば、災害時の備えは完全である
B. キャンプ場は必ず災害時の避難先になる
C. 車移動や限られた荷物で過ごす経験が、分散避難を考えるヒントになることがある
D. 犬連れキャンプは防災とはまったく関係がない
正解:C
解説:
犬連れキャンプは、防災そのものではありません。ただ、車移動、限られた荷物、クレートやベッドの使用、普段と違う環境で過ごす経験などは、分散避難を考えるヒントになることがあります。


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